3次方程式や4次方程式の解の公式がどんな形か、知っていますか?3次方程式の解の公式は「カルダノの公式」、4次方程式の解の公式は「フェラーリの公式」と呼ばれています。そして、実は5次方程式の解の公式は存在しないことが証明されているのです…
はるかって、もう二次方程式は習ったよね。
はい。二次方程式の解の公式は中学生でも習いましたけど、高校生になってから、解と係数の関係とか、あと複素数も入ってきたりして、二次方程式にも色々あるんだなぁ〜という感じです。
二次方程式の解の公式って言える?
はい。
えっくすいこーるにーえーぶんのまいなすびーぷらすまいなするーとびーにじょうまいなすよんえーしーです。
二次方程式の解の公式
$$ax^2+bx+c=0(a\neq 0)$$のとき、
$$\displaystyle x=\frac{-b\pm\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$$
ただし、$$a,b,c$$は実数
うん、正解!
それでは質問だ。なぜ一次方程式の解の公式は習わないのでしょうか?
え、一次方程式の解の公式ですか…?
そういえば、何ででしょう…?
ちなみに、一次方程式の解の公式を作ってくださいと言われたら、できる?
うーんと、
まず、一次方程式は、$$ax+b=0$$と表せます。なので、$$\displaystyle x=-\frac{b}{a}$$ですね!
おっけーだ!但し、$$a\neq 0$$を忘れないでね!
一次方程式の解の公式
$$ax+b=0(a\neq 0)$$のとき、
$$\displaystyle x=-\frac{b}{a}$$
じゃあ、$$2x+3=0$$の解は?
えっ、$$\displaystyle x=-\frac{3}{2}$$ですよね?
うん。じゃあ$$-x+3=0$$は?
えっと、$$x=3$$です。
いいねー
次は、$$3x^2-5x+1=0$$の解は?
えっ..ちょ、ちょっと待って下さい。計算します。
いや、いいよ計算しなくても(笑)
いや、でもさすがに二次方程式になると、暗算ではできません…
あっ、そうか。一次方程式は公式を使う必要がない…?
と、いうと?
えっとですね、一次方程式ぐらいだと、公式なんか使わなくても、暗算ですぐできます。
でも、二次方程式になると、暗算ではできません。そのために、公式を使うんじゃないですかね?
うん!多分そういうことだと思うよ!
わざわざ一次方程式の解の公式のせても、あんまり意識して使わないからね。
三次方程式の解の公式
とういうことは、今はるかは、「一次方程式の解の公式」と、「二次方程式の解の公式」を手に入れたことになるね。
はい!計算練習もちゃんとしましたし、多分使えますよ!
では問題です。
三次方程式の解の公式を求めて下さい。
ううう…ぽんさんの問題はいつもぶっ飛んでますよね…
そんなの習ってませんよー
確かに、高校では習わないね。
でも、どんな形か気にならない?
確かに、一次、二次と解の公式を見ると、三次方程式の解の公式も見てみたいです。
どんな形なんですか?
実は俺も覚えてないんだよ…(笑)
えぇー!!
でも大丈夫。パソコンに解いてもらいましょう。
三次方程式$$ax^3+bx^2+cx+d=0$$の解の公式はこんな感じです。
三次方程式の解の公式
(引用:http://www.wolframalpha.com/input/?i=ax^3%2Bbx^2%2Bcx%2Bd%3D0)
えええ!こんな長いんですか!?
うん。そうだよ!
よく見てごらん。ちゃんと$$a,b,c,d$$の4つの係数の組み合わせで$$x$$の値が表現されていることが分かるよ!
ホントですね…
こんな長い公式を教科書に乗せたら、2ページぐらい使っちゃいそうです!
それに、まず覚えられません!!(笑)
だよね、だから三次方程式の解の公式は教科書に載っていない。
この三次方程式の解の公式は、別名「カルダノの公式」と呼ばれているんだ。
カルダノの公式ですか?カルダノさんが作ったんですか?
いや、いろんな説があるんだけど、どうやらこの解の公式を作った人は「タルタリア」という人物らしい。
タルタリアは、いろんな事情があってこの公式を自分だけの秘密にしておきたかったんだ。
でも、タルタリアが三次方程式の解の公式を見つけたという噂を嗅ぎつけた、カルダノという数学者が、タルタリアに何度もしつこく「誰にも言わないから、その公式を教えてくれ」とお願いしたんだ。
何度もしつこくお願いされたタルタリアは、「絶対に他人に口外しない」という理由で、カルダノにだけ特別に教えたんだけど、それが良くなかった…
カルダノは、約束を破って、三次方程式の解の公式を、本に書いて広めてしまったんだ。
つまり結局は、この公式を有名にしたのは「カルダノ」なんだ。
だから、今でも「カルダノの公式」と呼ばれている。
公式を作ったわけじゃないのに、広めただけで自分の名前が付くんですね…
自分が作った公式が、他の人の名前で呼ばれているタルタリアさんも、なんだか、かわいそうです…
この三次方程式の解の公式を巡る数学者の話はとてもおもしろい。興味があれば、学校の図書館で以下の様な本を探して読んでみるといいよ。この話がもっと詳しく書いてあるし、とても読みやすいよ!
分かりました。なんだか面白そうですね!
ところで、四次方程式の解の公式ってあるんですか!?
三次方程式の解の公式であれだけ長かったのだから、四次方程式の公式っても〜っと長いんですかね??
面白いところに気づくね!
確かに、四次方程式の解の公式は存在するよ!それも、とても長い!
見てみたい?
はい!
これが$$ax^4+bx^3+cx^2+dx+e=0$$の解の公式です!
四次方程式の解の公式
(引用:http://www.wolframalpha.com/input/?i=ax^4%2Bbx^3%2Bcx^2%2Bdx%2Be%3D0)
すごい….!
期待を裏切らない長さっ!って感じですね!
実はこの四次方程式にも名前が付いていて、「フェラーリの公式」と呼ばれている。
今度はちゃんとフェラーリさんが発見したんですか?
うん。どうやらそうみたいだ。
しかもフェラーリは、カルダノの弟子だったと言われているんだ。
なんだか、ドラマみたいな人物関係ですね…(笑)
タルタリアさんは、カルダノさんに三次方程式の解の公式を取られて、さらにその弟子に四次方程式の解の公式を発見されるなんて、なんだかますますかわいそうですね…
たしかにそうだね…(笑)
じゃあじゃあ、話戻りますけど、五次方程式の解の公式って、これよりもさらに長いんですよね!
と思うじゃん?
え、短いんですか?
いや…そうではない。
実は、五次方程式の解の公式は「存在しない」ことが証明されているんだ。
え、存在しないんですか!?
うん。正確には、五次以上の次数の一般の方程式には、解の公式は存在しない。
これは、アーベル・ルフィニの定理と呼ばれている。ルフィニさんがおおまかな証明を作り、アーベルさんがその証明の足りなかったところを補うという形で完成したんだ。
へぇ…
でも、将来なんかすごい数学者が出てきて、ひょっとしたらいつか五次方程式の解の公式が見つかるかもしれないですね!
そう考えると、どんな長さになるのか楽しみですねっ!
いや、「存在しないことが証明されている」から、存在しないんだ。
今後、何百年、何千年たっても存在しないものは存在しない。
存在しないから、絶対に見つかることはない。
難しいけど…意味、わかるかな?
えっ、でも、やってみないとわからなく無いですか?
うーん…
じゃあ、例えばこんな問題はどうだろう?
次の式を満たす自然数$$n$$を求めよ。
$$n+2=1$$
えっ…$$n$$は自然数ですよね?
普通に式を解くと、$$n=-1$$になってしまいます。
式を満たす自然数$$n$$なんて存在しません。
だよね?
でも、式の計算の方法をまだ習っていない人たちは、$$n=1,2,3,\ldots$$と、$$n$$を1ずつ増やしながら代入していって、延々に自然数$$n$$を探し続けるかも知れない。
$$n=4$$は…違う。$$n=5$$は…違う。$$n=100$$でも…違う。$$n=1000$$まで調べても…違う。こうやって、$$n=10000$$まで計算しても、等式が成り立たない。こんな人を見てたら、どう思う?
えっと…
すごくかわいそうなんですけど、探すだけ無駄だと思います。
だよね。五次方程式の解の公式も同じだ。
「存在しないことが証明されている」ので、どれだけ探しても見つからないんだ…
うーん…そうなんですね、残念です…
ちなみに、五次方程式に解の公式が存在しないことの証明はアーベルとは別にガロアという数学者も行っている。
その証明で彼が用いた理論は、今日ではガロア理論とよばれている。ガロア理論は、現在でも数学界で盛んに研究されている「抽象代数学」の扉を開いた大理論とされているんだ。
なんだか解の公式一つとっても奥が深い話になって、興味深いです!
もっと知りたくなってきました!