- 平均点より上の点数であっても順位も上とは限らない。
- データの種類を見て相加平均、相乗平均のどちらを使うのか考えなければならない。
- どんな数に対しても、相加平均は相乗平均より大きいか等しい。
この前、中間テストがあったんですよ!
おう。で、結果はどうだった?
数学の点数が、平均点より上だったんですよ!これって頭がいいってことですよね?!
喜んでいるところ申し訳ないんだが、そうとも言えないぞ。
えっ!そうなんですか…?
例えば、5人がテストを受けて、はるかが80点、他の4人が、100点、95点、90点、10点だったとする。
平均点は分かるかな?
$$(100+100+100+80+10)\div5=75$$
なので、平均は75点ですね。
私の点数は80点なので、平均点より上です!
うん。それで、順位は何位?
え、えっと…
わ!下から2番目です!
そう。それでも、はるかは喜べる?
喜べません。だって、自分より点数の高い人が3人もいて、私は5人中4位だもん。
そうだよね。このように、点数は平均点より高いのに、順位で見ると、半分より下になることがあることがあるんだ。
平均点より上だからって、順位も上だとは限らないんですね。
相加平均とは?相乗平均とは?
ところでぽんさん。数2で相加相乗平均の関係をやりました。
でも、公式だけ見ていても意味不明なんです。
相加相乗平均の関係
$$\displaystyle \frac{x+y}{2} \ge \sqrt{xy}$$
そうか。ではまず、相加平均、相乗平均とは何か、というところから見ていこう。
相加平均は、よく知られてる普通の平均のことなんだ。
…といいますと?
例えば、A君、B君の身長が、それぞれ168cm、172cmとしよう。
この時、2人の身長の平均はいくらか計算できる?
えっと…
$$(168+172) \div 2=170$$ なので、平均は170cmです。
うん。正解!
実は、これが相加平均なんだ!
あ、そっか!
私たちが日常生活で使ってる平均を、難しい用語で「相加平均」って呼ぶってことですね!
そう!その通り!
2つの数を足して、それを2で割るのが相加平均だよ。
じゃあ、「相乗平均」って一体なんなんですか?
うーん、そうだな…
さっきは身長を平均したけど、じゃあ、アリの大きさと地球の大きさの平均ってどれぐらいだと思う?
うーん…
すごく小さい「アリ」と、すごく大きい「地球」の平均だから、人間の身長とか、ビルの高さぐらいじゃないですか?
じゃあ、計算してみよう!
アリと地球の大きさの平均
アリの体長:$$0.01$$m(1cm)
地球の直径:$$12742000$$m(12742km)
平均は、$$(12742000+0.01)\div2\fallingdotseq6371000$$ m(地球の約半分)
ということで、アリと地球の大きさの平均は、6371kmだ。
ん?なんか大きすぎるような…?
感覚と全然違ってしっくりきません。
そうだよね。ここで相乗平均を計算してみよう。
相乗平均とは、2つの数をかけて、それの2乗根(ルート)を考えるんだった。
アリと地球の大きさの平均
アリの体長:$$0.01$$m(1cm)
地球の直径:$$12742000$$m(12742km)
平均は、$$\sqrt{12742000\times0.01}\fallingdotseq357$$m
ということで、アリと地球の大きさの平均は、357mだ。
うん、なんだか感覚とあってる気がします!
でも…
どうしたの?
いや、よくよく考えると、平均が色々あるって変じゃないですか。
そもそも平均ってなんなのか、よくわからなくなってきました。
じゃあ、基本に戻ってみよう!
そもそも、何のために「平均」という数を考えるのか分かる?
…改めて聞かれると、なぜでしょう?
平均の役割は、「複数のデータを簡潔に示す」ことだ。
…ピンときません。どういうことでしょうか?
例えば、2年A組と2年B組という2つのクラスがある。
そこで、どっちのほうが全体的に見て背が高いのか、知りたいとしよう!
今、A組とB組、それぞれの組に30人の生徒がいるとします。はるかだったらどうする?
うーん…
A組の生徒の身長は150cmと170cmと130cmと…、B組の生徒の身長は160cmと180cmと140cmと..って、順番に見ていけばいいんじゃないんですか?
うん、それも一つの方法だ。
でもそれだと、60人の身長を比較しなきゃいけないよ?
確かに、大変です…
そんなときに平均を使うんだ。「A組の平均身長が164cm、B組の平均身長は159cmです。」って言われたらどうかな?
なるほど!分かりやすい!
だろ?これが、平均の役割は「複数のデータを簡潔に示す」ってことなんだ。
平均は「代表値」とも呼ばれる。A組の身長のデータを全部見るのは大変だから、平均値が「A組代表」として教えてくれるんだ。
なるほど!
でも、普通の平均、つまり相加平均だけだと、さっきの地球とアリの例みたいに、おかしな数字が出てくることがある。
だから、与えられているデータの数字や種類を見て、相加平均を使うのか、相乗平均を使うのか、考えなければならない。
なるほど!
実際、日常生活で相乗平均を使うほうが良い例は少ないんだ。だから、相加平均だけ知ってれば、なんとかなる場合が多い。
でも、極端に大きい値や小さい値を扱うときや、経済学の研究、あと、お金の計算をするときは、相乗平均をよく使うんだ。
相加相乗平均の公式
で、結局、相加相乗平均の式は何を言ってるんですか?
ああ、すっかり忘れてたね笑
さっき、はるかは数式で書いてくれたけど、日本語で相加相乗平均の式を書くと、こうなる。
相加相乗平均の式
【数学バージョン】
(相加平均)$$\ge$$(相乗平均)
【日常バージョン】
どんな場合でも絶対に、相加平均は、相乗平均より大きくなる
A君、B君の身長がそれぞれ168cm、172cmだったとする。この時2人の身長の相加平均と相乗平均を求めてみよう。
相加平均は、$$(168+172)\div2=170$$ よって170cm。
相乗平均は、$$\sqrt{168 \times 172}\fallingdotseq169.98$$ よって169.98cm。
相加平均と相乗平均の大きさをくらべてごらん。
ほんとだ。相加平均のほうが大きい。
ね。これがどんな数に対しても常に成り立つと言っているんだよ。
なるほど!
さっきは2人の人を考えましたけど、3人とか、4人の場合でも成り立つんですか?
うん、実は、相加相乗平均の公式は、3つ以上の数字でも成り立つことが証明されているんだ。
えっ!3つ以上の相加相乗平均ってどうやって計算するんですか?
相加平均では3つの数を足して、3で割る、相乗平均では、3つの数をかけて、3乗根をとったりするんだよ。
相加相乗平均の関係(3つのとき)
$$\displaystyle \frac{x+y+z}{3} \ge \sqrt[3]{xyz}$$
そうなんだ。便利な公式ですね。
そうだろー!ちなみに相加平均は算術平均、相乗平均は幾何平均と呼ばれているんだ。
いろいろな平均
相加、相乗以外にも、平均ってあるんですか。
あるよ、例えば調和平均とか。
調和平均(2つのとき)
$$\displaystyle \frac{2}{\frac{1}{x}+\frac{1}{y}}$$
うわ。調和平均ってなんだか複雑そうですね。
確かに、式はややこしい。
でも、この調和平均は、音の高さと弦の長さなどの音楽理論で用いられる、立派な「平均」の1種なんだ。
平均って、たくさん種類がありますね。何種類あるんですか?
実は、平均は無限種類考えることができるんだ!
ええっー!
平均の一般式というのを紹介しよう。
平均の一般化式
$$\displaystyle \sqrt[m]{\frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n} x_{i}^{m}}$$
この式において、mに1を代入すると相加平均に、0を代入すると相乗平均に、-1を代入すると調和平均になる。
※相乗は厳密には、m→0
mには、好きな整数を入れることができて、好きなだけ平均を考えることができるんだ。
わあ!すごいですね。
ちなみに、m=2のときは、二乗平均平方根と呼ばれている。それ以外のmは、名前はついてないけど、いろんな平均があるよってことだ。
平均について、いろいろと理解できたような気がします!