- 漸化式は「今の数」と「次の数」の関係を表す方程式という見方をすると意味が分かりやすいです。
- フィボナッチ数列は自然界の「隠れたルール」になっていることがあります。
ぽんさん、学校で数列をやっているんですけど・・・ちょっとよく意味がわからないことがあって・・
数列とはまた珍しい。何だろう?
あの・・ざ、ざ、・・「ざんかしき」でしたっけ・・?
・・?
あれ・・そんな名前のものありませんでしたか?
あー・・・「ぜんかしき」だね。「漸化式」だ。
間違えて覚えてました!
いやいや。よくある読み間違いだ笑
それでその漸化式がよくわからないということかな?
そうなんです。式の言っている意味がよくわからなくて・・・
なるほど。
じゃあ実際に例で考えてみよう。
はるかは、貯金はするのかな?
一応、月に500円ずつ貯金するようにしてます。
おお、堅実なんだなはるかは。
いつからはじめたの?
500円貯金をはじめたのは高校入学してからですね。
高校に合格して、お金を気にせずいろいろ遊んでたらいつの間にか貯金箱の中が300円しかなくて・・・
さすがに危ないと思って、将来のために貯金しないとって。
そこから500円貯金を始めたんだ。
はい。
じゃあ、これを題材に漸化式の話をしよう。
はるか、今の貯金額はいくらある?
ええ・・・。
いくらでしょう・・・貯金箱を見てみないことにはわからないです。
じゃあ、文字でも使ってみるか。
今の貯金額(Money)を$$M_{now}$$としよう。
来月の貯金額を$$M_{next}$$としよう。
これ、どう表せる?
えっ、うーん・・・
今の貯金額から500円増えるので・・
来月の貯金額は今の貯金額に500円を足したものです。
今の貯金額はわからないけど・・・。
そこで、$$M_{now}$$を使って表してみよう。
こうですか?
$$ \displaystyle M_{next}=M_{now}+500 $$
そう!そうなる。
ここまでの話をまとめると、こんな感じになる。
貯金の話と漸化式
現在の貯金額を$$M_{now}$$、1ヶ月後の貯金額を$$M_{next}$$とすると
現在の貯金額($$M_{now}$$)に500円加えたものが来月の貯金額($$M_{next}$$)なので
$$M_{next}=M_{now}+500$$
と表される。
ありがとうございます。
それで、これが漸化式とどう関係するんですか?
この方程式をちょっといじればよくみる漸化式になるんだ。
$$M_{now}$$を$$a_n$$に、$$M_{next}$$を$$a_{n+1}$$に置き換えてみると
$$a_{n+1}=a_n+500$$
あっ、「漸化式」だ!
この漸化式は、今の貯金額($$a_n$$)を使って来月の貯金額($$a_{n+1}$$)を計算する方法を表現している。
$$a_n$$が「現在」に対応していて、$$a_{n+1}$$が「未来」に対応しているわけですね!
そうだね。
初項$$a_1$$は貯金のスタート地点、いわば「過去」かな
そう考えると、漸化式とは、現在の情報から未来の情報を得る方程式といえるかもね。
なんだかカッコいいですね!
漸化式の考え方~等差数列の場合~
次は漸化式として、$$a_{n+1}=a_n+500$$を考えてみようか。
$$a_n$$は「今」、$$a_{n+1}$$は「次」のものを表すから・・・
“今のものに500を加えると次のものになる”という意味ですね!
そうだね。
これってよく知ってる数列じゃない?
??
よくわからないです。
実際に数字を代入しながら考えてみよう
数字を代入しながら考えられるのが数列の強みのひとつだ。
最初の項$$a_1$$については$$a_1=300$$としよう。
その次の$$a_2$$はどうなる?
$$a_2$$は$$a_1$$に500を足して300+500=800ですね。
そうだね。
図にするとこんな感じになっていく。
これは等差数列ですね!
そのとおり!
ということで、一般項$$a_n$$はどう表される?
初項が300で、公差が500の等差数列だから、$$a_n=300+500(n-1)=500n-200$$になります。
そうだね。
という感じで、数列の「現在の数」と「次の数」の関係を表しているのが漸化式なわけだ。
漸化式の考え方~等比数列の場合~
じゃあ次の例を出してみよう。
はるかがお金を銀行に預けているとして、1年預けると預金額が10%増えるとしよう。
10%ですか?少ないですね・・・
いやいや、実際ありえないくらいの高利率だぞこれは笑
そうなんですか?
最初お金は1万円入れているとしよう。
現在入ってる預金額を$$a_n$$として、そのままずっと放置してたら来年の預金額の$$a_{n+1}$$はどうなる?
10%増えるから、今のお金が次の年には1.1倍になっているので、$$a_{n+1}=1.1a_n$$ですね!
そうそうそんな感じ。
一般項はどうなる?
今わかってる数を1.1倍したら次の数が得られるから・・・
初項が10000,公比が1.1の等比数列ですね!
一般項は$$a_n=$$10000×$$(1.1)^{n-1}$$になります。
n=5としたら大体14000円くらいになる。
それってすごいんですかね・・?
これが100万とか最初に入れてたらとんでもない額になる。
5年で140万ですか!確かにすごい・・・。
まあ、大体漸化式の意味はわかってもらえたかな。
まとめるとこんな感じだ。
2項間漸化式の意味
漸化式$$a_{n+1}$$(次の数)$$=a_n$$(現在の数)$$+d$$は、初項$$a_1$$、公差$$d$$の等差数列を表している。
漸化式$$a_{n+1}$$(次の数)$$=ra_n$$(現在の数)は、初項$$a_1$$、公比$$r$$の等差数列を表している。
3項間漸化式とフィボナッチ数列
ここまで簡単な漸化式の例を2つ紹介してきた。
難しいけど、とても有名な数列の漸化式も紹介しておこう。
おねがいします!
$$a_{n+2}=a_{n+1}+a_n$$
フィボナッチ数列という数列だ。
今までと違ってnが3回出てくるんですね・・
いわば、過去と現在わかっている情報を使って未来の情報を出す式、「3項間漸化式」というものになる。
実際に考えてみよう。
1,1,2,3,・・と続いているとき、たとえば次の3つはどんな数になる?
ええっと・・・
前の2つの数を足したものが次の数になるから・・・
5番目が、2+3で5、6番目は3+5で8、7番目は5+8で13ですね。
そうだね。
このフィボナッチ数列の一般項はどうなる?
求めるんですか?
何から手をつければいいのやら・・
フィボナッチ数列は3項間漸化式だから、さっきの等差数列タイプとかとは比べ物にならないくらい難しい。
過程は省略して答えを言おう。一般項はこうなる。
$$\displaystyle a_n=\frac{1}{\sqrt{5}}\{(\frac{1+\sqrt{5}}{2})^n-(\frac{1-\sqrt{5}}{2})^n\}$$
うわあ・・なんだかすごいですね・・
さっきしていた計算にはどこにも$$\sqrt{5}$$なんてなかったのに、一般項に$$\sqrt{5}$$が現れるのが不思議です。
でもこの式の$$n$$にどんな自然数を入れても結果は自然数になるんだ。なんとも不思議だね。
なぜ$$\sqrt{5}$$が出てくるのか。一般項の出し方を探っていけば分かる。
調べればすぐ出てくるから、気になったら一度出し方を見てみてほしい。
わかりました!
フィボナッチ数列と日常生活
さてこのフィボナッチ数列がなんで有名なのかというと・・。
足し算だけしか出てこないからですか?
確かに式自体が単純なのもあるかもしれない。
しかしもっと重要なことは、この漸化式は「美しさ」をその中に隠し持っていることかな。
はるかは黄金比という言葉をきいたことはある?
あるような、ないような・・
黄金比とは、「見た目がもっとも整っているように見える比」のことだ。
・・・?
ピラミッドやミロのヴィーナス、こういった「美しい」ものに黄金比が隠れている。
と、ことばで言ってもなかなか伝わりにくいかな。
このページ(※外部サイト)に詳しく書いてあるので参考にしてみて欲しい。
黄金比のほか、ひまわりや松ぼっくりといった植物にもフィボナッチ数列が隠れているという話もあるぞ!
ますます不思議な数列ですね!
エリオット波動理論
フィボナッチ数列は自然界の「隠れたルール」になっていることがしばしばある。
なので・・
たとえば株価変動のような不規則な動きにも、フィボナッチ数列のメカニズムが入っているはずだ!
・・・
・・・え?
つまり、フィボナッチ数列を使えば、将来の株価も予想できるはず!
ええええ!?
そんな考え方にしたがって形作られた株価変動の理論が、「エリオット波動理論」だ。
なんだかすごいですね・・。実はそんなルールで株価が変わるなんて・・
いや、どうやら経験的な理論で学問として根拠があるわけではないらしい。
根拠はないのに「理論」なんですか?よくわからないですね・・
まあ、フィボナッチ数列や黄金比はそれだけよく信じられているってことだね。