容疑者Xの献身にも登場!数Aの問題が世紀の難問に繋がる


要点チェック!
  • 順列や組み合わせの問題では「もれなくダブり無く」考える力が身につきます。
  • この考え方はMECE(ミーシー)とよばれ、社会人になっても役に立ちます。
  • 数Aの色塗りの問題は、少しアレンジすると、数学上の超難問に早変わりします。

いろわけの問題が難しいよー!

「いろわけの問題?」
なんだそれ?

あのね、こんなのだよ〜


「いろわけ」の問題「いろわけ」の問題

ああ、平面図形の色の塗り分けか!
場合の数の単元で出てくる問題だよね。

そうそう、それそれ!

俺も、習った時はよく分かんなかったよなー
いつも、どっか考えるのを忘れてて、答えが合わないのが普通。

ほんとそれだよぉ〜
それで、答えも合わないし、答えの解説を読んでもよく分かんないし、「もう、わっかんないよぉおぉ〜!!」ってなるんだよね(笑)

「漏れなくダブりなく」考えることは難しいね。

なにその「もれなくだぶりなく」って?

「漏れ」というのは考え忘れという意味だ。本来なら考慮しなくちゃいけないことを、考え忘れてしまうことを言う。
問題の解答を見て、「あぁ、そういう場合も考えられるのかー!」みたいなことは、よくあるよね。
その状態を「漏れ」という。

「ダブリ」というのは、同じものを2度以上考えてしまうという意味だ。

あぁ!なるほど!!

考え方に、漏れとかダブリがあるから、自分の答えと解答が一致しないんだねー!

そうそう。この「漏れなくダブりなく」という考え方は、今後生きていく上でとても重要だ。
会社で働くと、「MECE(ミーシー)」という言葉を良く聞くようになる。

みーしー?

MECEは、Mutually Exclusive and Collectively Exhaustiveの頭文字で、まさに「漏れなくダブりなく」という意味だ。
例えば、あかりはスポーツが好きだったよね。

うん。最近はバドミントンばっかりやってるよ!

じゃあ将来、バドミントンのラケットを作る会社に就職したとしよう。
その会社で、新しいラケットを開発することになりました。
ラケットを作るのに、何を考えなければいけないかな?

えーとね、まず「デザイン」は大事だよね。あとは「グリップの太さ」や「ガットの張りの強さ」も大切だよ!。あとね「軽さ」も重要!重たいと、腕がつかれるんだもん。

それだけでいいのかな?
それだけちゃんと考えれば、いいラケット作れる?

えっ?うーん…
デザインが良くて、軽くて、グリップやガットが自分好みだったら、売れると思うんだけどなぁ…

例えば、「丈夫さ」とかはいらないだろうか?
「軽さ」を重視するあまり、軽い材料ばかり使って、1週間に1回壊れるようなラケットって売れるかな?

ああっ、そうか!!「丈夫さ」も重要だよ!!
ラケットって丈夫そうに見えて、たまに壊れたりするんだよね〜

うん。あとは「価格」とかも考えないといけない。どれだけデザインが良くても、値段が10万円もしたら、誰も買ってくれない

うーん。たしかに…

そういう時に、「MECE的」な考え方が必要だ。ラケットを作るときは、ラケットという商品に必要な機能や特性などを、「漏れなくダブりなく」あげて、それらをしっかりと検討していかなければいけない。

商品を作るのって、結構大変なんだね…

それってさ、色の塗り分け問題ぐらい、ささっとできないと、会社で働けないってこと?

いやいや、そこまで言ってないよ(笑)
でも、MECE的な考え方を、このような問題で鍛えておくと、今後役に立つよ〜ということが言いたかったんだ。


いろわけの問題と世紀の難問とのつながり

で、さっきの問題はできたの?


「いろわけ」の問題「いろわけ」の問題

ああ、すっかり忘れてた!

よくわかんないけど、家帰ってからちゃんと勉強するよ…

じゃあ、暇つぶしにこんな問題考えてみようか。


「いろわけ」の問題2「いろわけ」の問題2

え、「何通り」じゃなくて、塗れるか?と言う問題?

うん、そうだ。簡単すぎる?

ちょー簡単だよ!はい、これでおっけー


「いろわけ」の問題2の解答「いろわけ」の問題2の解答

おお、正解!

じゃあ次の問題だ。


「いろわけ」の問題3「いろわけ」の問題3

できるかな?

えっ…?これでいいんでしょ?


「いろわけ」の問題3の解答「いろわけ」の問題3の解答

こんな簡単な問題、小学生でも出来るよ!

でもぽんさんのことだから、どうせこの後すごく難しい問題が来るんでしょ?

えっ(笑)
ま、まあ、それは、やってみなきゃわからないでしょ…??

はい、次の問題だ。


「いろわけ」の問題4「いろわけ」の問題4

ほらー絶対そうじゃん!!超難しいじゃん!!

小学生でもできる?

絶対できないよ!
だいだい、図形が書いてないのに、どうやって確かめればいいのー!?

確かに難しいよね。俺もできないよ。

えっ。。。ぽんさんでもできないの(笑)

うん。できない。
というか、多分ほとんどの数学者はできないんじゃないかな?

えぇー!!そんな問題があるの?

うん。普通にあるよ!

大体、「数学の問題は必ず解ける」というのは幻想だ。
「高校数学の問題は必ず解ける」というのはあってるけど、普通の数学の問題は解けないものもある。

世界中の超天才数学者が何百年かけても解けない問題もあるんだ。
そのような問題は「未解決問題」と呼ばれてる。

へぇー

この、「すべての図形は4色でぬれるか?」というのも、その未解決問題?

いや、この問題は「未解決問題だった」というのが正しい。

こんな数学の問題があるんだけど…いうことが世の中に広まってから、多くの数学者が証明しようとしたんだけど、誰もできなかった。

そして、すごく最近の話だけど、1976年になって、2人の数学者によって「すべての図形は4色でぬれる!」ということが証明されたんだ。

1976年って、ほんとに40年前ぐらいだよね!
あかりのお父さんやお母さんが生まれたぐらいの年かも…

そうだね。数学は日々進歩していることを実感させられる。
で、この「すべての図形は4色でぬれるか?」という問題、数学の世界では「四色定理」と言われている。

1976年までは「四色問題」という呼び方だった。まだ正しいことが証明されてなかったからね。
でも、1976年に証明されてから、四色問題は、「四色定理」という呼び方に変わった。数学の新しい定理が生まれた瞬間だ。

「定理が生まれる瞬間」って、なんかすごいね! 数学の定理って、もっとずっと昔に考えられたものかと思ってたよ。。

え、ちょっとまって…!

ん?なに?

四色定理が証明されたということは、塗り分けるのに4色以上の色が必要な図形は存在しないということ?

うん。そうだよ。どんな図形も必ず4色あれば塗り分けられる。
平面図形に限るけどね。

日本地図も!?都道府県って4色で塗り分けられるの?

うん。

世界地図も?どんな複雑な国でも、4色あれば塗れるの?

うん。そうだよ。
四色「定理」だもん。それが証明されたんだよ。

ひぇー!!すごい…!!

…そういえば、四色問題って、どこかで聞いたような気が…

多分、東野圭吾の小説「容疑者Xの献身」じゃないかな?

後に映画化されて、福山雅治が主演を演じていたね。

東野圭吾『容疑者Xの献身』特設サイト|文藝春秋

あぁ!そうだ!
あの映画の中で「四色問題」って出てきたよね!

そういえば、映画の中で、福山雅治演じる湯川教授が「この証明は美しくない」とか言ってたのを覚えてるよ!
「証明が美しくないって、なんやねん!」ってすごく思ったけどね〜

よく覚えてるね!
確かに、四色問題の証明は、よく「美しくない」と言われる。

というのも、この証明はコンピュータを使って、ありとあらゆる図形を上手く分類して、それらを総当りで確かめているんだ。
もちろん、単純な総当りではなくて、いろんな工夫がされてるんだけどね。

ん?総当りってどういうこと?

じゃあ、こんな問題を例にしよう。


次の$$x$$に当てはまる数を求めよ。
$$x-2=3$$

簡単だよ。$$x=5$$だよね?

うん。正解!どうやって解いた?

えっとね、「移項」した!


移項による解法
$$x-2=3$$
$$-2$$を右辺に移行して、
$$x=3+2$$
右辺を計算すると、
$$x=5$$

うん。普通の考え方だね。

でも、こんな考え方はどうだろうか?


総当りによる解法
$$x-2=3$$
$$x=1$$のとき、$$1-2\neq3$$
$$x=2$$のとき、$$2-2\neq3$$
$$x=3$$のとき、$$3-2\neq3$$
$$x=4$$のとき、$$4-2\neq3$$
$$x=5$$のとき、$$5-2=3$$
よって、$$x=5$$

うーん。確かにこれでもいい気がする…

でも、なんかあかりの移項を使ったやり方のほうが、こう、なんというか…
なんか上手く言えないけど、かっこいいような気がする!

うん。そうだよね。
初めの移項を使ったやり方のほうがキレイだし「美しい」。
でも、後の総当りの方法は、なんか長いし、あまり「美しくない」。

四色定理の証明は、まだ総当りの方法しか考えられていないんだ。
だから「美しくない」とよく言われる。
総当り以外の方法で解けないかと、今も考えている数学者もいると思うよ!

へぇーなるほど!
四色定理の証明が美しくないって、そういうことだったんだね!!

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