この記事は後半です。
ぜひ前半からお読みになって下さい。
クイズ番組発!100万人が考えた確率の問題!(問題編)
いよいよモンティ・ホール問題のタネ明かしの説明をしようというところだけど・・
一気に説明するのは難しい気がするので、まず肩慣らしから・・
えぇー
直観にだまされない確率の考え方って?
2人の子どもがいる人がいます。
1人は男の子です。
残りの1人が女の子である確率は?
$$\displaystyle \frac{1}{2}$$ に決まってるじゃん!
あかりの言う通り、$$\displaystyle \frac{1}{2}$$ だと思います。
ところが、これは $$\displaystyle \frac{2}{3}$$ なんだ。
えーーー?
どうしてですか?
先に言っておくけど、もちろん性別で生まれやすさに偏りがあるとかいう話ではないぞ。
男女の性別は、「同様に確からしい」と考えての話だ。
2人の子どもがいるとのことだけど・・。
どんな場合があるかすべて挙げてみようよ。
男の子2人、男女1人ずつ、女の子2人の3パターンですね。
ほぼあっているが、少し違うかな。
少し・・?
わかった!わかったかも!
どっちが先に生まれたか?じゃない?
おっ、じゃあどんなパターンがある?
男子2人、女子2人と・・
男の子が先に生まれて、兄と妹、女の子が先に生まれて姉と弟で・・
全部で4通りかな
そう!4通りある。
組み合わせで考えていました。
さて、どうやら1人が男の子だとわかっているらしいので・・。
女の子2人という可能性はないみたいですね
そうそう
なので、ありうる場合は、男の子2人の場合と、兄と妹の場合、姉と弟の場合の3通り
「もう片方が女の子」はこのうち2通り
どのケースも「同様に確からしい」ので、 $$\displaystyle \frac{2}{3}$$ と結論できる。
「同様に確からしい」ってよく問題とかで見るけど、なんなの?
さっき言ったみたいに、偏りがないってことだよ。
たとえば、実は女の子が男の子よりも3倍生まれやすいとかだったら・・
3つまでしぼったうちの、男の子2人の場合ってすごく起きにくそうじゃない?
「同様に確かしい」ってのは、そういう偏りはありませんという前提だ
なので、ありえる全部の場合の数を分母に、注目している事象の場合の数を分子にとることで確率を求めることができる。
そんな意味が・・
まったく気にしてませんでした・・
図にしてまとめるとこんな感じ。
あと、この問題は「条件付き確率」の問題だけど、条件付き確率を求める方法をおさらいしとくね。
条件付き確率の求め方
Aが起きるときBが起きる確率$$P_{A}(B)$$は
$$\displaystyle P_{A}(B)=\frac{P(A\cap B)}{P(A)}$$
$$P(A\cap B)$$は「AとBが同時に起きる確率」、$$P(A)$$は「Aが起きる確率」
※「同様に確からしい」場合は、分母を「Aが起きる場合の数」、分子を「AとBが起きる場合の数」としても可
全米を揺るがした「モンティ・ホール問題」の解説(やり方はいろいろあります)
で、いよいよモンティ・ホール問題を解説する準備ができた。
ここまで長かったですね・・。
問題の確認をするぞ。
ドアが3つある。
どれか1つに当たりの高級車が奥にある。
車の位置は偏りがなく、どのドアに車があるかは同様に確からしいように決めておく。
それで、その当たりのドアを当てるんだよね。
挑戦者がドアを1つ選ぶ。
すると挑戦者のモンティ・ホールが、選ばなかった2つのドアのうち、はずれのほうを開く
もし挑戦者が、初めの選択で当たりのドアを選んでいた場合、残った2つのドアは両方外れになっているけど・・
そのときは、無作為にどちらかを開くものとする。
司会者がはずれのドアを開いたあと、挑戦者は初めの選択を変えるか、変えないかきかれる。
変えたほうが得なのか?というのが「モンティ・ホール問題」。
それで、変えることで当たる確率が2倍になるんでしたね。
そう。
タネ明かし!タネ明かし!
それで、今回この問題を突破する戦術なんだけど・・
さっきの子どもの例と同様に、「数え上げ」でやってみる
ただ、話が入り組んでるから、どう数え上げるかは結構ややこしい。
なので、場合分けをする。
確率問題の必須スキルですね。
とりあえず、挑戦者が選ぶドアを固定してしまおう。
最初コップに名前をつけていたように、ドアにも1,2,3と順に名前をつけることにする。
とりあえず、挑戦者はまず1番のドアを選ぶ場合だけを考えよう。
最初の選択を変えることで当たりになる場合を調べればいい
このゲームの中で注目すべきは、(1)挑戦者が初めに選んだドア、(2)車のあるドア、(3)司会者が開けるドアの3つある
(1)挑戦者が1番のドアを最初に選んで
(2)車が1番のドアにあって
(3)司会者が2番のドアを選んだときを
(1,1,2)って表そう。
じゃあ、1番のドアを選んでいて、車が2番のドアにあって、司会者が3番のドアを開いた場合なら・・
(1,2,3)って感じですか?
そうそう
で、挑戦者が1番のドアしか選べないとしたら、ありうるのはどんな場合かというのを考える。
司会者ははずれのドアしか選べないってことに気をつけてくれよ
(1,1,2),(1,2,3),(1,3,2)の3通りですね。
1つ抜けているぞ
あれ?そうですか?
あ、わかった!
(1,1,3)だ!
最初の選択で当たりを選んだ場合は司会者ははずれ2つからでたらめに選ぶんだよね。
おう。その通りだ。
てなわけで、1番のドアを選ぶ場合だと、(1,1,2),(1,1,3),(1,2,3),(1,3,2)の4通りがある
それで、初めの選択を変えることで当たりになるのがどれなのか、というのが大事。
(1,1,2)と(1,1,3)ははずれですね。すでに当たりを選んでいますから。
(1,2,3)と(1,3,2)は変えると当たりになる!
大丈夫そうだな。
さて、じゃあ次は、「1番ドアを選ぶとき、最初の選択を変えることで当たりになる確率」を求める。
4つのうち2つでしょ?
$$\displaystyle \frac{2}{4}$$ で $$\displaystyle \frac{1}{2}$$ !
それはおかしいのでは・・?
$$\displaystyle \frac{1}{2}$$ ということは半々、つまり変えても変えなくてもいっしょということになります。
今、あかりはありうる場合の数である4通りを分母に、選択を変えると当たりになる2通りを分子にして確率を計算したが・・
そうやって確率を計算できるのは、すべての場合が「同様に確からしい」ときだけだ。
今回はダメなの?
今あげた4通りは、起こりやすさが等しくない
実は偏りがある
なのでダメです。
そんなぁ・・
まあ、問題の設定にヒントがある。
今回カギになるのは車の位置が、「同様に確からしい」ということなんだな
車がドア1にある確率、ドア2にある確率、ドア3にある確率はいずれも等しい・・
ということは、少なくとも(1,2,3)と(1,3,2)は同じ確率になります・・よね?
うん
ややこしいのは(1,1,2)と(1,1,3)だな。
これも問題の設定をよーく確認すると気づくことがあると思う。
そういえば!
初めの選択で当たりを選んだ場合は、モンティさんははずれのドア2つを無作為に選ぶんだよね!
これも「同様に確からしい」ってことにならない?
そう!それがカギだ!
じゃあ、(1,1,2)と(1,1,3)は同じ確率になる・・
ある程度情報がそろってきたな。
あともうひと押し。
ドア1,2,3のうちどこに車があるか
その確率はいずれも等しい
じゃあ、この3つの確率を合計するといくらになるか?
・・すべての場合を考えていることになるから1ですね。
そうなるよな
ドア1,ドア2,ドア3に車がある確率はいずれも同じで、その合計は1
あー・・じゃあそれぞれのドアに車がある確率は $$\displaystyle\frac{1}{3}$$ ですね。
ということは、(1,2,3)が起きる確率って $$\displaystyle\frac{1}{3}$$ になるの?
そうそう!
1番のドアを選ぶことが決まっていれば、2番に車がある以上司会者が3番ドアを開くことは必然・・
わかってきたぞ・・
ということは(1,3,2)も $$\displaystyle \frac{1}{3}$$ ですね。
うん。
さあ、あとは(1,1,2)と(1,1,3)だな。
わかったかも!
(1,1,2)も(1,1,3)も確率は同じで、車がドア1にある確率は $$\displaystyle \frac{1}{3}$$ なんでしょ!
おお、気づいたかな。
$$\displaystyle\frac{1}{3}$$ を二等分して・・(1,1,2)も(1,1,3)も確率は $$\displaystyle \frac{1}{6}$$ !!
お見事!
ということで、ドア1を選ぶとき当たる確率は?
(1,2,3)が $$\displaystyle\frac{1}{3}$$ で、(1,3,2)も $$\displaystyle\frac{1}{3}$$ だったよね・・
2つ合わせて、 $$\displaystyle\frac{2}{3}$$ !
そういうことなんだ・・
さて、じゃあ挑戦者が必ずドア2を選ぶとき、変えて当たる確率は?
同じですね、 $$\displaystyle\frac{2}{3}$$ です。
ドア3にこだわる場合も $$\displaystyle\frac{2}{3}$$ ですね。
これでたぶん全部の場合を計算したから・・
「最初と選択を変えることにより当たる確率」は・・
$$\displaystyle \frac{1}{3}\times\frac{2}{3} +\frac{1}{3}\times\frac{2}{3} + \frac{1}{3}\times\frac{2}{3}=\frac{2}{3}$$ となります。
ようやく、全米を揺るがした「モンティ・ホール問題」が解決できたな・・
ここまで考えてきた内容も、図にしてみるとわかりやすい。
こんな感じかな。
というわけで、最初の「トリック」の正体が分かったわけだ
挑戦者が最初の選択で当たりを選んだ場合は、司会者ははずれのドア2枚のうち1枚をランダムに開ける・・これがタネだったのね!
ということで、タネもわかったことだし、『今後5年の流行がすべてわかる本』ください!
ぽんさん!お願いします!
あー・・えっとな・・実はな
そんなものはない
えっ
えっ
いや~モンティ・ホール問題もどきのゲームが思い立ったからさ
やってみてほしいな~~って思ってさ・・
利用されたんですね僕たち・・
ま、まあアレだよ
・・今度コロッケおごるよ
おなかすかせてまっとく!
僕は参考書もお願いしますね。
えーっと・・
・・今回の話をまとめるとさ
確率の問題で仮定している「情報」は、すべてなんらかの形で計算の中に組み込まれる
「無作為」や「同様に確からしい」といったささいな表現も見逃さないことが大切なんだと・・
モンティ・ホール問題は教えてくれたな!
なので、確率の問題を考えるときは、いつも以上に問題設定となる情報に要チェックだ!
そうそう、ちなみにだけど・・
司会者ははずれしか開けないという前提を外して、当たりも開けることがあると考える変種もあってな・・
この場合だと、確かに変えても変えなくても同じになる
おおー
例の100円玉ゲームを友人たちとやってみながらまたいろいろ考えてみますね。
おう
モンティ・ホール問題は多くの変種があるから、またぜひ調べてみてくれ。
はーい、ぽんさんありがとう!