この記事は後半です。
ぜひ前半からお読みになって下さい。
AKB48のCD売上を、高校で学ぶ「関数」を使って予測しよう!(前編)
関数を予想する、売上を予測する
一番最初にみたグラフをもう一度見てみよう。
横軸が曲名だと扱いにくいので、数字にしよう。
で、このグラフの線を取り除いて、点だけにしたものが以下の図だ。
AKB48は、いままで39枚のシングルCDをリリースしている事がわかるね。
うーん…なんかごちゃっとしてるような…
さっきは点が3つだったので、関数の形を簡単に予測できましたけど、、
今回は、点が39個もあります。これ、どうやって関数の形求めるんですか?
一旦、前回の復習も含めて整理しよう!
まず俺たちは、こんな箱(関数)を作りたい。
入れる数が「何枚目のCDか」で、出てくる数が「そのCDの初動売上枚数」ですよね。
それで、その箱に次に発売されるCD、つまり40枚目だから、40という数字を入れた時に、箱から何が出てくるかを予測するんですよね?
そう!その通り。
なんでそれを「予測」といったか、覚えてる?
えっと…
その関数が何なのかは、具体例からでは完全に分からない。
だから、関数の形を「予想」するしか無い。
それで、予想した箱、つまり関数から出てくる数だから、その数はあくまでも「予測」にすぎない、ですよね。
そう、完璧だ!
おおっ!さすがゆう先輩。
ではまず、箱、つまり関数の形を予想しよう。
さっきからそう思って考えてるのですが、39個の点を通る関数って、どうやって導けばいいんでしょうか?
ある2点を通る1次関数の式とか、ある3点を通る2次関数の式とかは、頑張ったら解けるんですけど、39個の点を通る関数って、式の数が大量になって、解ける気がしません…
うーん。確かに…
正直言うと、この39個の点すべてを通る関数は非常に複雑だ。そんな関数は、38次関数になってしまう。
さ、38次関数…!!
さすがにそれでは計算が大変だ。
なので、代わりにこんな箱を考えてみよう。
出てくる数字に「約」がついてます。
うん。箱から出てくる数は「売上枚数ピッタリ」じゃなくて、「だいたい売上枚数ぐらい」の数が出てくればいいと考えるんだ。
もっと正確に言うと、「実際の売上枚数」と「箱から出てくる数」との差が、できるだけ小さくなる箱を考える。 こうすると、39個の点をぴったり通る関数じゃなくて、それぞれの点の近くを通る関数を考えればいいことになる。
なるほど…
例として、簡単な箱の形を考えてみよう。
こんな関数はどうだろう?
$$y=40000x$$
この関数が、本当に緑の箱になっているかを確かめるには、グラフに重ねてみると分かる。
うーん…ズレ過ぎ?
えーぜんぜん違うじゃん!
ズレ過ぎだよ!!
いくら緑の箱が「だいたい売上枚数ぐらい」になればいいからって、さすがにこの関数の形じゃ、適当すぎない?
うーん。確かに…
これでは「実際の売上枚数」と「箱から出てくる数」がちょっと離れすぎているね。
あんまりいい予測にはならないけど、もし仮に、とりあえずこれで、緑の箱の形が予想できたとしよう。
そして、この関数の$$x$$に40を代入すると、AKBの40枚目のCDシングルの売上枚数が予測できる。
緑の箱に「40」を入れれば、その箱から予測売上枚数が出てくるのと同じだ。
おおお!そっか、関数の形を予想して、次のCDの売上枚数を予測する!
なんかわかった気がする!
【予想した関数(緑の箱)の形】
$$y=40000x$$
【AKB48の40枚目のシングルCDの売上予測】
$$x=40$$を代入して、
$$y=40000\times40=1600000$$枚
なるほど!よく分かりました。
でも、こんな適当に作った関数じゃなくて、もっとしっかり計算すれば、もっといい関数が作れる気がします。
「もっといい関数」っていうのは?
あ、えっと…「実際の売上枚数」と「箱から出てくる数」との差ができるだけ小さくなるような関数です!
うん。そうだね!
じゃあさ、こんな式を考えてみよう。
さっき考えた関数よりもキレイに売上を予想することができるよ!
$$\displaystyle y=\frac{1250000}{1+10000\times2.7^{-0.5x}}$$
この式はロジスティック関数と呼ばれるものだ。
AKB48の売上枚数は、初めの頃は少なかった。でも、途中からどんどん伸びている。
これは、AKB48の知名度が全国に広まっていった時だ。ファンの数が増えれば増えるほど、AKB48の知名度はどんどん上がっていく。
そして、知名度が上がれば上がるほど、CDの売上枚数も増えていく。
そして最後に、AKB48の知名度が全国規模になったとき、これ以上ファンの数が増えることはない。CDの売上枚数も、ここから大きく増えることはない。
そのような特徴をうまく表したのが、このロジスティック関数だ。
え、ちょっとぽんさん、全然意味わかんないよ。
あかり、もう一度式をよく見てみよう。
$$\displaystyle y=\frac{1250000}{1+10000\times2.7^{-0.5x}}$$
箱に入れる数が$$x$$、箱から出てくる数が$$y$$だ。
あ、そっか、 $$x$$に何か数を入れると、$$y$$から数が出てくる。確かにこれは関数だね!
でもさ、これほんとに緑の箱の関数になってんの?
じゃあ、さっきと同じようにして、この関数をグラフに重ねてみよう。
えっと…こんな感じになるよ!
すごい!なんかいい感じですね!
へぇ〜!でも、ピッタリにはならないんだねー
あ、でも緑の箱は「だいたい売上枚数ぐらい」の数が出てくればいいから。。。これでいいのか?
そうそう。さっきも言ったけど、この点全部を完璧に通る関数は38次関数になっちゃうからね。今回はこれぐらいで妥協しよう。
そして、関数が予想できたということは、ついに??
あ、やっと枚数の予想ができる!
そう、AKBの次のCDの売上枚数を「予測」する準備が全て終わった!
さて、ここからどうするんだっけ?
はい!次のCD、つまり「40」と言う数字を$$x$$に代入して計算します!
よし、計算してみよう!
【予想した関数(緑の箱)の形】
$$\displaystyle y=\frac{1250000}{1+10000\times2.7^{-0.5x}}$$
【AKB48の40枚目のシングルCDの売上予測】
$$x=40$$を代入して、
$$\displaystyle y=\frac{1250000}{1+10000\times2.7^{-20}}\fallingdotseq\frac{1250000}{1}=1250000$$枚
おおお!!$$y$$の値が出てきた!
125万枚??
うん。そうだね。
長かったけど、以上のことから、次のAKB48のシングルCDの初動売上は「約125万枚」だと予測できる。
本当にあってんの、これ…?
何回も言ってる通り、緑の箱からは「だいたい売上枚数ぐらい」の数字が出てくるので、ピッタリ「125万枚」にはならないよ。
でも、例えば80万枚とか、170万枚とかみたいに、125万枚から大きく外れることは無いと思うよ。
なんか、数学で予測までできて、凄いです…!!
本当にそれぐらい売れるのか、次のシングルが楽しみですね!
他のアーティストの売上も見てみよう
ぽんさん、最初に他の音楽アーティストのCDの初動売上枚数のグラフ見せてくれるって言ってたよね!
あっ、そうだったね!すっかり忘れてた(笑)
私も気になります!
じゃあ、みんなにお見せしよう。
ちなみに、グラフの中に一本だけ直線が書かれているが、これは、さっき考えてた緑の箱と同じだよ!
簡単な関数を使っているので予測の精度は落ちるかもしれないけど、それでも、アーティストのCDが今後も売れ続けるのか、それとも売れなくなってしまうのか、全体的な傾向は見ることができるね。
嵐は初動売上のデータがなかったから、通算の売上枚数データを使ってるよ。
へぇー!こうやってみると、面白いね!
嵐は大丈夫そうですけど、ゆずとか、このまま行くとどんどん売れなくなりそうです。ミスチルもちょっとずつ下がっているような…
どうすれば売れるようになるんですかね?
うーん…残念ながら、高校までの数学の知識では「このまま行くと売上枚数がヤバそうだな…」ということは教えてくれるが、「ヤバイからどうすれば復活できるか?」ということまでは、教えてくれない。
CDを含め、いろんな商品を上手に売るためには、経営学で学ぶ「マーケティング」という知識が必要だ。もちろん、この「マーケティング」にも数学が使われる場面がたくさんある。これは、またの機会にお話しよう!